ブックケース用貼函作製の為の注意点

函貼とその印刷物について・・・。
用紙・・・四六判 70キロ〜110キロ。 あまり厚すぎると小口の端の処理がボコボコしたり、背が浮いたりするので注意が必要です。
薄すぎるとボールの地の色が透ける場合があり色合いが変わることがあります。
表面がザラザラしている紙は、いくら色止めのニスをしても、運搬中や書店で他の本の印刷をこすりとってしまい汚れがつくことがあります。
コシのない紙や紙の繊維が剥けるような紙は、小口の折り返し部分や角部分の印刷がすぐにはげてしまいます。
用紙選びには、かなり注意しないと、反りや印刷落ち、汚れ等、後に色々な問題が発生します。


印刷…デザイン上で天地にベタを持っていく際、黒色等の濃い色は避けた方がよい
(もちろん出来ないことはないです・・・但し、どうしても糊しろを擦らなければいけないので、万が一、ニカワが外にはみ出ると、白く目立つリスクを避けられません。
全面黒のデザインも避けた方がよい。
・デザイナーさんは、あながち、この手のデザインがお好きなようで・・・というのもあまり出まわってないというのが理由なのですが、
「他の人がやらない」のはやらない理由があるのです。(笑)
・印刷した場合には必ずニスを塗りましょう・・・作業において、紙が浮かないよう良く擦りますので、全面ニスを塗らないと必ず色落ちします
(紙によっては、ニス引きしても、紙やすりのように他の本や汚れを拾ってきてしまうのでニスだけでは安心できない場合があります。)
・印刷面が濃い場合、ニスを糊しろ部分だけ抜きましょう。ニカワを使用しても多少水分がありますのでニスがあると弾いてしまい接着面が弱くなります。
・表面加工した函貼も使用できます。但し、その場合は、必ず製函所の指定のPETを御使用ください。PPは接着処理済みのものでも接着しない場合があり、事故の元です。


構造上の問題=底入れ形式の貼函の場合
日本全国、四季がいろいろで、乾燥・湿気を繰り返します。貼函は、函貼と中身のボールの伸びが違うためスルメとはいかないまでも、必ず反ります。配本の時に反らなくても状況により後から「本が函から出ない」という事故がおきます。
函だけが原因ではなく本の表紙のボールが反ったりもします。基本的に標準の函貼の緩みは本の束プラス2ミリくらい大きく作りましょう。現在は、ニカワの接着が主流なので、作製直後のソリは昔に比べ、格段になくなりました。(とはいえ、出来たては、大きさ見本といえども、ユルユルで本がケースの中でカラカラいっています。)
束見本に合わせ作製された函の大さ見本が、偶然、、まったく反らなければ、本を持って逆さまにすると、函は「カラン」と落ちます。
その時に、大きさが緩いのか、反ってないから緩いのか見極めてください。
ご自分で本の厚みを計ってみるのもいいでしょう・・・、見本を作製した者に函の束を尋ねて、2ミリ〜2.5ミリの範囲であれば、OKです。


構造上の問題2=(中身のボールが)天地糊付で作製し、機械貼の場合
現在なお主流は手貼り職人さんが超絶のテクニックを駆使して貼っています。
たとえ何万部出ても頑張りますが、但し多少時間がかかります。
現在、機械でも十分対応済みです。やはり機械・・・早いもんです・・・が・・・。
ボール、函貼とも型抜しなければならない為、抜型代がかかります。
例えば、抜型が1つ30000円とした場合、60000円かかります。
部数が1000部 程でしたら1部につき型代だけで60円・・・現実的な数字ではありません。
機械貼り作業のロスも多少あります。
20000部以下であれば、底入れ形式の方がコスト的に優れていると思います。
但し、重版があった場合は、部数が少ない場合、底入れ形式に変更することを推奨します。

優れている点・・・部数が上がる、函が反りにくい。
問題点・・・・初期費用として抜型代がかかる。函貼のロスが多少出る。仕上りはもちろん綺麗ですが、背の角が多少丸くなる(好みなのであまり問題ないと思います。)

とはいえ・・・底入れ形式・・・天地糊付で作製し、機械貼・・・といわれても関係者でないとピンとこないと思いますので、お取引のある紙器メーカまたは、私までご相談下さい。(相談だけでもOKですよ・・・後は息のかかった函屋に作らせて下さい(笑))
部数、函貼の印刷の状況、配本スピード、単価・・・で色々な選択肢があります。

本の貼函は、素晴らしい日本の文化ともいえるものです。また、機械函とは違う風格がでます・・・是非採用してみてください。



束見本を基準とした、函貼(函に貼る紙)の断ち寸法

24号ボール使用(厚みおよそ2ミリ)の場合。
☆左右断ち寸法 
おり返し分17ミリ+紙の厚さ2ミリ+小口の長さ+深さの余裕分35ミリ+紙の厚さ2ミリ+束見本の束幅+束の余裕分2ミリ+紙の厚さ2ミリ+小口長さ+深さの余裕分35ミリ紙の厚さ2ミリ+おり返し分17ミリ

☆天地断ち寸法
(束見本束幅+束の余裕分2ミリ)×75%+束見本天地長さ+天地余裕分5ミリ+紙の厚さ2ミリ+(束見本束幅+束の余裕分2ミリ)×75%

機械的に当てはめれば↑のようになります・・・ちょっとわかりづらいかもしれませんが、理屈的にはこのサイズで断っています。
ただし!印刷原稿作成の際には、表1の寸法をおり返し部分までうっかり計算してしまうと、中心が大幅に左、又は右にに寄りますので、原稿作成の場合は↓です。

表1の原稿寸法
天地・・・束見本の天地+天地の余裕分5ミリ
左右・・・束見本の小口の長さ+深さの余裕分35ミリ
背の左右・・・束見本の束幅+束の余裕分2ミリ



貼り函